hekiyou連載
Vol.8 アメリカ滞在中の最も衝撃的な事件と出会い〜強盗と難民〜

Vol.8 アメリカ滞在中の最も衝撃的な事件と出会い〜強盗と難民〜

日本食レストランでウェイトレスのアルバイトをしていた友人が一時帰国する間、代役で生まれて初めてのウェイトレスをすることになった。そこで長く働いているミャンマーの難民の男の子セイレ(20代前半)が、客対応をはじめ仕事のやり方を丁寧に教えてくれた。

あるとき彼が、自分が描いた1枚の絵を見せてくれた。(写真1)様々な国籍の人々がカゴの中の鳥を囲んで議論している。彼はRefugeeという単語を口にし、カゴの中の鳥は僕たち難民だ。周りで皆色々議論しているけれど、僕たちはここに居る鳥のようなもので、そのように扱われているんだ。と言った。

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写真1

「人間になりたかったからアメリカに来たんだ。国籍がないということが、どういうことだか分かる?僕がどの国でどうなっても、誰も何も言わないんだよ。僕を守ってくれる国はないんだ。妹や弟達を見て、この連鎖を断ち切らないと行けないと思った。両親は未知の世界だから大反対だったけどね。アメリカに5年間住むと国籍がとれるんだ。」 私には想像のつかない世界の話に衝撃を受けた。

ある日、店に全身黒づくめの男二人が入ってきた。一人はライフル銃を肩に抱えている。私は何が起こったのか一瞬わからなかったが、無意識に寿司シェフの男性やオーナーの背後に移動していた。日本人のオーナーに非常ベルがあると言われてモゾモゾしていたら、「Don't move! What you are doing...?」とライフル銃を向けられた。カチャっと引き金を引く音がした。足がすくむというのはこういうことである。心の底から、死にたくない、と思った。

客とレジから全ての現金を巻き上げて二人が去った後、その日誕生日だったセイレは、「彼らの目的はお金だよ。だから大丈夫。」と言った。銃を突きつけられながら、冷静にレジを開けて現金を渡していたセイレ。彼は続けた。「僕は自分の村が焼かれてキャンプに逃げたから。彼らの目的はお金で、撃つことはないってすぐ分かったよ。」

強盗が去った後に青白い顔をして帰った客達の中で、4人の中国人女性は、何事もなかったかのように伸びきった麺類を完食して帰った。強盗が入った瞬間に手を挙げて金目のものを全部テーブルに出す様子も、慣れたものだった。これが、アメリカなのか・・・?これが、中国魂なのか・・・? レストランの2軒隣に住んでいた私は、その後髪型を変え、サングラスをして外出した。友人の代わりに2ヶ月だけ働いたレストランで、命について、自分の生い立ちについて、これほど深く考えさせられる出来事に遭遇するとは思わなかった。

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男の子の目が印象的で忘れられない一枚
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写真3
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写真4
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写真5
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写真6

写真3〜6:難民キャンプの中の様子だよ、本当に美しいところなんだよ、とセイレは教えてくれた。絵は、キャンプの中の高校で習ったと言う。(絵・ストーリーは、本人の了解を得て掲載している)

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