2回のプログラムに参加した計12名は、アメリカの田舎町で育ち、海外はもちろん、ニューヨーク市(マンハッタン)にも行ったことがなく、このプログラムの為に渡日前日までアルバイトをし、ローンを組んで参加した学生がほとんどだった。彼らは映画や漫画等を通して日本の文化に興味を持ち、日本に来ることを夢みていた。
学生にとって、東京・京都・広島・仙台は大きな街だった。見るもの全てが珍しく、次々質問してきた。"なぜ日本の女性は雨でもないのに傘をさしているの?""マスクをしている人たちはウイルスを持っているのでしょう?沢山いるけど大丈夫?"トイレの自動便器が宇宙船のようだと驚き、電車の切符が小さくて可愛いと眺めていた。日本人のマナーの良さ、定時にくる電車、美味しい食べ物、親切な人々・・全てのことに感動し、わずか日本滞在2日目にして、"Yuko, I love your country..."と告白された。日本を離れたくない、帰りの飛行機を乗り過ごすからよろしく、とも。
生花体験では草月流の説明をよそに個性を発揮し、一中節十二世家元の都一中先生の高価な三味線を無断でふと手に取ったり、宮島で失くしたSuicaが広島県警に届けられて驚き、築地市場では生魚の臭いに鼻を押さえた。また、津波被災地の南三陸町では、阿部御夫妻が育てた桃を堪能し、ジャガイモ掘りの後はトラックの荷台に乗って帰り、阿部家の台所を占領してフライドポテトを作った。帰国の際に浴衣と下駄で空港へ向かったのにはこちらが仰天した。
文末に、学生たちの写真・ジャーナルの中から抜粋した、日本への思いを紹介する。これを読んで、日本と日本の人々が彼らの心を強く動かしたことを改めて確信した。授業の成績は、出席点、授業態度、最終レポート(日本の芸術・文化に関する研究課題を事前に決め、滞在中2回のプレゼンを経て最終レポートにまとめた)、写真ジャーナル等の総合評価だった。
国会議事堂訪問の際、元外務大臣の岡田克也氏の"国家間の良い関係を築く為には、なるべく若いときに他国の人と交流することが大切だ。その意味でこのプログラムは大変素晴らしい"との発言を聞いて、人と人の交流を大切にしたこの3週間強のプログラムの準備・実行には大変なエネルギーを費やしたが、実現できて良かったと改めて思った。
•日本で訪れた場所、人々、友達は、宝物だ。地球上にこんな素晴らしい国があっただなんて感動だ。
•海外にいる人々に会い友達ができたことがただ嬉しい。
•日本に行けたことは私の人生で一番素晴らしいこと。最も行きたかった国で、それが叶った。日本のことを想うだけで涙が出る。
•毎朝、ああ、シリアルでなく白米が食べたいなと思う。いつ又日本に行けるか分からないと思うと胸が張り裂けそうになる。
•この旅を終えた今、何と言っていいか分からない。この気持ちは言葉では表しきれない。どうしても又来たい。