辟雍NEWS
2025年新年の挨拶
2025年新年の挨拶
東京学芸大学辟雍会会長 馬渕 貞利
真の意味での「オール学芸の会」へ
明けましておめでとうございます。
私たちは昨年、二人の大切な人を失いました。お一人は,「辟雍会」の名付け親であった佐藤正光先生、そしてもうお一人は長年にわたり会の活動を支えてきてくださった事務局員の林静代さん。謹んでお二人のご冥福を祈りながら、今年も辟雍会の新しい飛躍を目指して頑張っていきたいと思います。
思い返せば、昨年は、日本でも世界でも暗いニュースが相継ぎ、目まぐるしく過ぎ去っていきました。日本では元日早々、能登半島地震が発生して能登の各地に甚大な被害をもたらし、翌2日には羽田空港で飛行機の衝突事故が起きて、被災地救援に向かう海上保安庁機が大破炎上し、日航機の方も無残に全焼しました。ただ、わずか10分ほどの間に日航機の乗客乗員が全員無事脱出に成功して、その沈着冷静な対応が賞賛されたことは皆さんの記憶にも新しいことと思います。夏から秋にかけては日本の各地で記録的な猛暑が続き、秋口には能登半島が再び集中豪雨に見舞われて、壊滅的な打撃を受けました。こうした状況を目の当たりにして、私たちは、地球が生き物のように日々変化している存在であることと、地球環境に異常事態が発生していることを、いやが上にも痛感せざるを得なくなっています。
一方、世界では2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻が今なお終息する気配さえ見せず、北朝鮮兵までが前線に動員されています。2023年10月のハマスによるテロ攻撃に端を発したイスラエルのガザ地区攻撃も、廃墟と化した地域で爆撃を繰り返し、病人や子供を殺戮し続けています。報復の連鎖が止まず、「自衛の戦争」が正当化されています。国際社会がこうした動きを止められなくなっている最近の状況をどのように理解したらよいのか。ウクライナ戦争ではロシアが、ガザ戦争ではアメリカが、拒否権を発動してまったく動きのとれない国際連合は、その存在さえもが深刻に問われる事態になっています。人道主義や平和主義が後景に押しやられ、アメリカのトランプ大統領のように、自己本位のナショナリズムを公然と煽る動きが世界の至る所で顕在化しています。こうした「人間精神の荒廃」ともいうべき状況が私たちにまた一つの不安を掻き立てています。
ところがもう一つ、情報化社会の加速度的進行が、私たちに新たな不安材料を提供しつつあります。昨年はまた、SNSを通した偽情報(フェイクニュース)や極端に単純化した主張が選挙に大きく影響することを私たちは身をもって経験する一年でもありましたが、アメリカでは生成AIを用いたフェイクニュースをトランプ陣営が大々的に流し、日本でも「奇妙な選挙結果」がいくつも出てきました。これまで移民が仕事を奪うという主張が極右勢力の有力な宣伝材料になっていましたが、今や生成AIに仕事を奪われるということが現実味を帯びてきました。AIが操作する無人タクシーが登場し、AIが作成した小説や漫画まで市場に出回るようになりました。
このようないくつもの不安材料に囲まれていても、「学校教育」は人類史の一つの到達点としての地位を保っており、優れた教育者の養成という課題も一つの社会的使命となっています。そこに東京学芸大学の存在意義があり、その発展を支える辟雍会の存在意義もあります。私たち辟雍会の活動は、会員相互の信頼と敬意に基づき、会員間の横のつながりを大切にして、真の意味での「オール学芸の会」(初代荒尾会長の言葉)という大きなネットワークを作っていこうとするものです。地球の変動や混沌とした政治の現況に惑わされることなく、私たちは辟雍会のあるべき方向を見据えて、新たな飛躍を期していきたいと思います。当面、私がもっとも重視したいことは、全ての都道府県支部の確立と正会員の拡大による、しっかりとした組織基盤を築くことと、全ての会員が意味ある存在と実感できるような、きめ細かな施策を体系的に整備することです。とはいえ、これは大変な作業です。忌憚のないご意見をどんどんお寄せいただき、活発に議論を展開しながら、新たな活動を模索し、その隊列に参加される人が増えていくことを願ってやみません。